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全学共通教育科目担当者委員会外国語部門
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1

外国語教育の方針CONCEPT

外国語教育の方針

 ICT技術(Information Communication Technology)が進展し、現代の社会では誰もが手もとのスマートフォンからインターネットにアクセスでき、世界中から発信される情報をリアルタイムで手に入れることができるようになりました。たとえ、自分の母語以外で書かれている情報であっても、オンラインの翻訳ソフトを使えば、即座に大体の意味を理解することも可能になっています。日常の生活において、母語が通じない状況に置かれたとしても、スマートフォンの通訳アプリを使えば、それなりのコミュニケーションをとることも可能でしょう。技術の進歩は日々続いており、近い将来にさらにもっと使い勝手がよく、より信頼性の高い、翻訳・通訳ソフトが登場してくることは間違いのないことだと思われます。

 そのような現代、そして将来の社会において、いまさら外国語を学ぶ必要性はあるのでしょうか。たしかに、ツールとしての外国語という視点のみから見た場合、外国語学習のレゾン・デートル(存在意義)は希薄化していると言わざるを得ないかもしれません。しかし、異なる視点から眺めた場合、外国語を学ぶ意義は、これまでと同様、あるいはこれまで以上にさらに重要性を増していると言えるのではないでしょうか。その異なる視点とは、私たち人間が暮らす社会の「一体性」とその社会を構成するメンバーである私たち人間の「心」という2つの視点です。

 まず1つ目の、社会の一体性について考えてみましょう。グローバル化が進む現代社会において、個人が自由に自分の意見をオンラインで発信できるようになっている状況で、正しく、信頼のおける情報だけではなく、明らかに誤っていたり、個人の尊厳を傷つけるような情報も目にすることが多くなっています。そして、そうした情報の中には、社会の分断を生み出すようなものが含まれていることも否定できません。たとえば、特定の人種や民族を蔑むような発言などは、明らかに社会の一体性を損なう危険性を示しています。そうした、ネガティブな情報に惑わされないためには、私たちは常に異なる文化的背景をもった人々の存在を意識し、その違いを認識するとともに理解を深めていく必要があります。そうした理解を可能にするもっとも効果的なアプローチは、その文化を背景とする言語を学ぶことだと考えられます。

 さらに、そうした社会を構成する私たち1人ひとりの「心」の問題に目を向けてみましょう。2020年に世界中に広まったCOVID-19(新型コロナウイルス)感染症の影響のため、企業では自宅勤務が推奨され、また、大学を含む教育機関では、遠隔授業を余儀なくされるという事態になったことは記憶に新しいと思われます。このパンデミックの状況下では、人が人と直接出会い、言葉を交わす機会が極端に減少し、コミュニケーションの場が現実世界から仮想空間を介在させたものへと大きく変化しました。そうした、直接的なコミュニケーションの機会が失われた結果、私たちが用いる言葉は、たとえ意味や意図が通じたとしても、なんとも空疎な雰囲気を伴うものとなってしまったと感じた人も多いのではないでしょうか。では、なぜそのような虚しさが生じてしまうのかと考えると、それは言葉の根源である「音」が人の心に訴えかける力が変わってしまったからなのかもしれません。私たちが言葉を用いてコミュニケーションをとるとき、音としての言葉は直接的に私たちの体に響き、届けられます。しかし、オンラインでのコミュニケーションでは、その音は、いったんデジタル変換され、その際に私たちが無意識のうちに受け取っていた言葉のもつ意味や意図以外の何かが失われてしまっている可能性は否定できないでしょう。

 また、COVID-19が収束し、奇しくも対面授業が再開した時期と等しく、生成系AIのChat GPTが公開されました。生成系AIを使えば、いとも簡単に外国語を翻訳することができますし、会話練習や長い論文を書くことさえできるようになりました。しかし、AIを相手に対話するときに違和感やぎこちなさを覚えることはありませんか。おそらくそれは、人間のコミュニケーションが、単に言語記号の置き換えに限られるものでではないことに起因するのだと思われます。人間は言語情報だけでなく、身ぶり、手ぶり、視線、表情や声の質などの非言語情報も含め、視覚、聴覚、触覚などの複数の知覚や身体運動を連動させながら対話相手との相互行為を繰り返すことで、メッセージを伝え合うのです。AIが汲み取り切れないこのような複雑な要素があるからこそ、人間のコミュニケーションは豊かなものとなっているのです。

 さまざまなツールが進歩を続けていても、やはり体や心に響く言葉の力は、直接的なコミュニケーションによってのみ受け取ることができるものであると思われます。その意味で、外国語の学びは、常に人と人との心を結びつけるもっとも魅力的な機会を得るための第一のステップなのです。

 国士舘大学全学共通教育科目担当者委員会外国語部門では、こうした問題意識をもって、外国語教育に取り組んでいます。本学学生が在学中に高い意識をもって外国語学習に取り組むことができるよう、さまざまなアプローチとさまざまな情報を提供していきます。外国語学習は一朝一夕で成し遂げられるものではありません。学生の皆さんには、本学の四徳目である「誠意・勤労・見識・気魄」を常に心の片隅に置きながら、外国語学習に取り組んでいただきたいと願っています。


外国語教育へのアプローチ

  • 国士舘大学では英語教育を中心に据えるとともに、多様な外国語の学習機会を提供しています。
  • 各言語のカリキュラムでは、「読み」・「書き」・「聞き」・「話す」の4技能をバランスよく学習できる基幹科目を設置するとともに、会話に特化した授業など、さまざまな選択科目を開講しています。
  • それぞれの言語の学習において、明確な目標となる資格試験の受験、資格の取得を支援する授業や指導を提供しています。
  • 初級者から中・上級者までさまざまなレベルでの学習機会が用意されています。
  • 国際交流センターと連携し、学習対象言語を生活の中で直接学ぶことのできる「海外研修」にも参加可能です。

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