実世界センシングとセンサ情報の意味理解の研究を行っています。 より詳細に述べますと、実世界におけるユーザの行動や状況、周辺環境を対話型インタフェースや着用型センサ、環境側センサを用いて取得・蓄積する研究を行っています。 現在の目標は、人間関係のような通常のセンサではセンシングできない情報を取得して計算可能とすること、実世界とサイバー空間(計算機の世界)の橋渡しを通じてユビキタスコンピューティングの高度化をすることです。 これにより、これまでは見過ごされがちだった情報の発信・検索・共有が可能となります。
人は社会の中で生きています。したがって社会構造の一つである人と人との繋がりが計算可能となればユーザの嗜好に合った情報発信が可能となります。これまでWebマイニング技術によってサイバー空間(計算機の世界)の中だけでの人間関係の解析は可能となりました。しかし実世界からの人間関係の取得はまだ発展途上です。本研究では人間関係のような通常のセンサではセンシングできない情報を取得することを目指します。現在の方法論はインタラクティブシステムの設置の工夫による取得です。そのため、ここでは「インタラクティブセンシング」と呼んでいます。
【業績】
人は興味のあるものの方向を向きます。実世界での人の活動を捉えるのに最も基本的な情報は位置ですが、本研究では向き情報にも着目しています。例えば、人と人が背中合わせで居るのか正面を向き合っているのか、もしくは、左右隣り合って居るのかで近くに居たとしてもその意味合いは異なります。ナビゲーションのような応用では位置精度は極めて重要ですが、興味や人と人の関係などの社会的な背景を基に情報支援を行う場合には高精度な位置情報よりも対象である人を中心としたローカリティが重要であると考えます。現在はグラフ(ネットワーク)を応用した位置および向き推定アリゴリズムと装着型デバイスの研究、そしてクラスタリングによるセンサデータマイニングの研究を行っています。
【業績】
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位置および方向の推定 |
位置情報に基づいてサービスを行うようなロケーションアウェアシステムでは、一般に、IDをベースに計算が行われます。しかし、ある特定の位置に存在する事実に基づいてIDに依存しないサービスを実現することも可能です。ここでは、これを「位置に基づく情報支援」と称しています。位置に基づく情報支援として有力なのが光通信です。光は、周囲に均一に伝わりやすい電波とは異なり、指向性を制御しやすいといった特長があります。この特長を用いれば、GPSや地磁気センサなどの位置・方位センサを内蔵しなくても、ユーザの位置と向きに基づいた情報伝達が実現可能となります。それだけでなく、指向性によってエネルギー密度も高めることができるため、情報だけでなくエネルギーの伝達も同時に可能です。こうした基本アイデアを基に、環境やユーザが提供するエネルギーのみで動作するインタラクティブな光通信デバイスや、それを用いて情報支援を行うバックボーンシステムの研究を行っております。
【業績】
光通信デバイスの一部の技術は、以下に示しましたように、Aimulet LA、Aimulet GHの2種類の端末として愛・地球博(愛知万博)で利用されました。ここでは端末およびシステムの設計だけでなく、開発の指揮を行いました。
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愛・地球博用に開発した屋外用端末 | 同、屋内用端末 |
インタラクティブセンシングやセンサネットワークのためのネットワークノードを実現する組込みシステムの研究開発も行っています。以前はPIC(Peripheral Interface Controller)などのマイコンを使って回路を組んでいましたが、現在はMES(Micro Embeded System)を使わせて頂き、これに機能モジュールを追加するための回路設計とローレベルのソフトウェア開発を行っております。開発したノードを用いて実世界センシングを行い、病院での患者さんの待ち時間軽減や地域振興のための研究に活かしています。
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機能モジュール開発 | 回路デバッグ |
また、最近はOS(Operating System)からは離れておりますが、学生時代には研究プロジェクトの一環で、Machマイクロカーネルを当時の4コアマルチプロセッサ計算機であるSun SPARCsation 20上での動作に成功させた経験があります。具体的には、pmapと呼ばれる仮想記憶周りとUXサーバ上の排他制御の見直しとコーディングを行いました。
通常の学会活動の他、2003年から今年で7年間、(社)人工知能学会の全国大会にて会の運営を支える裏方のボランティア活動を行っています。参加者へのネットワーク接続サービスを実現するため、無線LANアクセスポイントやバックボーンネットワークの設計・設置・運用を行っております。2009年6月の人工知能学会全国大会でも引き続き行いました。
この他、2009年12月のWISS2009でも活動を行いました。
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バックボーン運用風景(JSAI2007:宮崎) | 無線LAN設定風景(JSAI2009:高松) |